日時
平成24年3月29日(木)
13時30分開場 14時開演 16時20分終演
会場
熊本県立劇場コンサートホール
〔設定〕貸館で使用、他施設は利用なし
訓練参加者数
約320人
内訳
一般参加者 |
一般参加者 130人 (主に熊本県内居住者) *事前申込者数は178人 |
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ホール関係者 |
約100人 *事前申込は39館 111人
館数・・・38館 都道府県別内訳 東京、静岡、福井、山梨、広島、山口、鳥取・・・各1館 福岡10館、佐賀2館、長崎1館、熊本10館、大分3館、 宮崎2館、鹿児島3館 |
熊本県立劇場 |
40人 |
出演者 |
陸上自衛隊第8音楽隊33人(演奏及び避難) |
関係者 |
約20人
陸上自衛隊第8師団司令部広報室、熊本県文化企画課、熊本県警察、熊本県危機管理防災課、 |
当日のタイムスケジュール
13:30 開場
14:00 開演 主催者(葉山館長)挨拶
14:10 大石氏講演「災害時の文化施設~東日本大震災に学ぶ~」
14:45 訓練の流れと避難方法の事前レクチャー
14:50 陸上自衛隊第8音楽隊演奏
15:00 演奏途中に震度6弱の地震が発生 ※音響と消灯で地震を演出
すぐに避難誘導を行う
・舞台・・・観客への避難誘導呼びかけ、出演者の避難誘導(搬入口へ)
・ホワイエ・・・避難経路の確保、避難場所の安全確認、観客の避難誘導
・本部・・・非常放送、情報収集、避難誘導応援等 ※火災発生有無の確認
15:10 避難誘導完了 (この後10分間の休憩)
15:20 熊本市中央消防署指導課による講評
15:50 第8音楽隊演奏再開
16:20 避難訓練コンサート終演
17:00 ホール関係者と意見交換会を大会議室で実施 約50人が参加
回答対応/大石時雄氏、事務局長、事務局次長、ホール課長
(配布資料)避難訓練コンサート行動表、進行台本、ほか
18:00 意見交換会終了
目的
コンサートの最中に、大きな揺れを伴う地震が発生したと想定し、次の3点を目的として実施。
【1】現場での判断の重要性確認(スタッフの能力向上)
大地震発生時には防災本部(1階事務室)も動けない状況であり、非常放送の設備までスタッフはすぐにはたどり着けず、現場(ステージ、ホワイエ)と連絡が取れない。 このため、現場が状況を判断し、観客や出演者の避難誘導を行う必要がある。
【2】避難誘導に携わる人数の確保
避難誘導にあたるスタッフの人数を増やす方策を検討。
ア)清掃、警備等の委託業者:観客の避難誘導に協力。
イ)主催者 *実際には多くの人数は期待できない。
・事前の打合せ段階で地震発生時の避難誘導について打合せ
震度別による対応(公演の中断、続行等)、責任者、避難経路、etc.
舞台付主催者は、出演者関係の避難誘導に協力。
ホワイエ付主催者は、観客の避難誘導に協力。
【3】観客を味方につける(パニックを防ぐ)
観客がパニックに陥ると、避難誘導が困難となる。
観客をパニックから守るには
・わかりやすい避難誘導の方法
・わかりやすい避難経路
・施設、スタッフへの安心感
関連企画
起震車体験
・劇場正面ロータリー 13:00~14:00…中央消防署
展示(エントランスホール)
・わが家の防災マニュアル、熊本市地震ハザードマップ…熊本市危機管理防災室
・東日本大震災での支援活動…陸上自衛隊第8師団
・東日本大震災に伴う特別派遣部隊活動記録…熊本県警察
展示(コンサートホールホワイエ)
・防災グッズ…ミドリ安全熊本株式会社
展示(モール) 3/17~4/6
・「未来への教科書」写真展…復興支援メディア隊
参加者への配布資料
- プログラム
- 熊本県防災情報メールサービス(熊本県危機管理防災課)
- 自主防災クラブの手引き(熊本市中央消防署)
- アンケート
アンケートの結果
入場者を対象として、Q1からQ8の項目についてアンケートを実施した。
*アンケートの選択項目の割合に関しては、Q7を除き無記入数は分母に加えずに計算している。小数点以下は四捨五入。このため、総計が100%にならない場合がある。
【回答者データ】
今回の訓練には320人余が参加したが、県立劇場関係者と出演者等を除く約230人のうち、8割強の192人がアンケートに回答している。
・性別では、男性76人、女性96人、無記入20人。
・年齢は、50代が一番多く48人、次いで、30代34人、40代32人、60代31人であり、70歳以上が19人、20代17人、10代4人、10歳未満6人となっている。無記入が1人。
・住まいでは、熊本市が84人、熊本県内が27人、熊本県外が68人。無記入が13人。県外からの参加者はそのほとんどがホール関係者である。
Q1 本日の公演をどのような方法でお知りになりましたか?(○はいくつでも)
242件の回答があった。
そのうち、チラシが一番多く109件(45%)、知人・家族からが28件(12%)、新聞記事が16件(7%)と続いている。
その他の30件(12%)の半数以上は公立文化施設の会合等で情報を入手している。また、県立劇場の広報誌「ほわいえ」11件(5%)、ホームページ10件(4%)、メールマガジン5件(2%)等、劇場の広報媒体によるものも目立った。
Q2 公共ホールには年間何回くらい出かけますか?
ホール関係者は、仕事での回数は含まないと捉えた人が多かったと考えられる。
Q3 公共ホールの防災対策に関して不安を感じたことはありますか?
不安を感じている人が半数以上を占めている。
「ある」を選んだ人の中では、次の3点に関して意見が多かった。
1 建物の耐震性
建物自体、天井、壁、照明やガラス等の落下物対策に不安を感じる。
2 会館スタッフについて
会館のスタッフが、きちんと避難誘導してくれるのか。
必要な訓練はできているか。 スタッフの人数は十分か。
3 避難経路、パニックについて
非常口(出入口)が狭く、人が集中したら危険。 避難経路がわかりにくい。パニックになるのでは。
具体的には、次のような意見が寄せられた。
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Q4 公共ホールで災害が発生した時にスムーズに避難できると思いますか?
「わからない」を選んだ人が半数、「思わない」を選んだ人も4割を超え、「思う」を選んだ人は1割以下である。
「思わない」を選んだ人の中では、パニックに陥ることを心配する意見が多かった。
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「わからない」を選んだ人では、「経験したことがないから」、「予測がつかない」、「避難経路」や「避難誘導の仕方」、「訓練の必要性」、「パニックになるのでは」、「ホールごとに避難方法が違うため対応できるかわからない」といった幅広い理由が挙げられている。
Q5 本日の避難訓練コンサートはいかがでしたか?
「よかった」を選んだ人が9割を占めている。ただし、この中には、出演いただいた陸上自衛隊第8音楽隊の演奏が良かったという回答も10人程度含まれている。
具体的には、次のような意見が寄せられた。
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「悪かった」と「わからない」を選んだ人からは、誘導時の声について聞こえにくかったという意見が多く見られた。これは、Q7においても顕著に表れている。
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Q6 本日の訓練では、避難する方向をどのように判断しましたか?(○はいくつでも)
「係員の誘導に従う」が半数を占めた。当然のことではあるが、そのホールにおいて、非常時に一番頼りにされるのはホールのスタッフであり、その責任は重い。
その他には、「係員の誘導は、声が聞えなかった」、「係員の声と明るくなったドアが目に入りましたので」という意見もあった。
Q7 係員の避難誘導はわかりやすかったですか?
「わかりやすかった」と「わかりにくかった」がそれぞれ4割以上を占めた。
「わかりにくかった」を選んだ人のほとんどは、その理由に係員の誘導の「声」を挙げており、また、「わかりやすかった」や「その他」を選んだ人の中にも「声」についての意見や疑問が多く寄せられた。今後の誘導の方法に改善が必要である。
※「その他」は「わかりやすかった」と「わかりにくかった」の両方を選択、もしくは選択なしで理由のみを記入している人数。
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Q8 熊本県立劇場の防災についてご意見やご感想、ご要望などご自由にお書きください。
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消防署講評
熊本市中央消防署指導課予防係 楢崎係長 避難訓練コンサートのような訓練に立会うのは、皆さんと同じ初めてで、楽しみにしていました。 結論から言いますと、今回の訓練は非常に良かったと思います。皆さんのご協力の賜物だと思っております。
なぜ良かったかというと、なぜ避難がうまくできたのか、なぜ誘導がうまくできたのかは、今日、このコンサート中に皆さん、地震が来るのが分かっていたからなのですね。しかも丁寧に、避難のときはこうしてくださいというレクチャーを受けていました。 皆さんはそのとおり静かに避難していただきました。 これでうまくできなかったときは、どうしようかと私も思っていたのですが、皆さんのご協力でうまくいきました。しかしそれ以外も県立劇場の職員の皆様、おそらく何回も訓練されたと思います。整然と皆さんを避難誘導されていました。しかも皆さんが見ていないところで、私達職員が配置され、事務所の方には非常放送設備や消防機械が設置された中枢となっていて、そちらの方に逐一連絡がいって、今どのような状況か分かっていたということでした。
職員の皆さんも非常に頑張ったと思っております。訓練というものは、私は失敗してもいいと思っております。訓練でいろんな問題点とか出ないと、次に生かされません。
今日見て感じたことは、細かい点ですが、職員のみなさんが地震の後の揺れが収まった後に皆さんを誘導されていましたけれども、もう少しドアの所から前に出て、はっきりと分かりやすいポーズで誘導したほうがよかったのではないかと思いました。ただ、身振り手振りだけですと、場内が暗くなります。暗くなったら身振り手振りではどうしても分からないので、ライトを持ってそれを振って誘導したり。コンサートホール内では声がどうしても反響します。あっちこっちから声かけしても、声が交錯するのです。ところが、席が満席になると、声が通らなくなるのです。人が吸収してしまう分もあるし、皆さんがザワザワと喋りだすと、消されることもあるのです。職員の皆さん各自がハンドマイクを持って、ライトを持って誘導することです。 ここにはホール関係者もいらっしゃるとのことですが、是非ともそういうことを考えてみてはどうか、ということを提案させていただきます。
地震は火災と違って、面で発生します、広域な面で、ですね。ですから火事が発生した建物の一部ではなくて建物全体に及びますから、建物全体の状況をいち早く知る必要があるのです。例えば階段部分、2階、3階部分が崩落して使えなかった、ということがあるかもしれません。トイレに行ったお客様が閉じ込められる、といった状況もあるでしょう。そういった情報の収集も必要になってきます。限られた人数の中で、職員の中でこれらをやるからには相当の訓練を積まないと、頭の中だけで考えているだけでは、実際に体が動きません。訓練を積まないと、訓練を通して課題を見つけて、それを改善して次の訓練にいかないといけない。こういったことで、防災の強い施設作りに寄与していただきたいと思います。
一つの提案として、今回の訓練で事前に逃げる方法を教えていたため、スムーズに避難ができた、ということであれば、今後公演前に放送でもいいから毎回こういったことをやる、が一つの方法です。特に中央から右側のお客様はこちらのドアから逃げてください、とかですね。飛行機に乗ったら必ず客室乗務員がライフジャケットを着て、いざというときになにをすべきか教えてくれ、それを見て分かります。施設の中の構造というのは、職員でないと分かりません。たまたま来たお客様や年1回か2回しか来ないお客様は、暗くなった時にどうやって逃げるか分からないわけです。職員が放送を使って逃げさせる、大事なお客様を守る、そういうことを常に念頭に置いて、今後訓練を続けていただきたいと思います。 |
後記
今回の避難訓練コンサートは、危機管理の中の、地震の中の、そのまたほんの一部分を想定して行ったものです。
震度は6弱。これは、立って歩けない状態で、お客様の多くは不安で逃げ出そうとしていて、私たちスタッフにとっても、主催者にとっても、公演を中断し避難することにためらいはない状況です。また、火災の発生はなし、他の施設は使用しておらず、避難誘導に当たれるスタッフも十分にいるという想定でした。
では、これが震度4だったら、あるいは5強だったら・・・、火災が発生していたら、職員や主催者が少なかったら・・・。状況は幾通りも考えられます。公演を中断するのか、避難するのか。
今回の訓練の目的の一つは、現場での判断の重要性。 1階の事務所横にある防災本部では、ホールと同じ程度の揺れを受けているとすれば、職員は火災の場合と違って非常放送の設備にすぐにはたどり着けず、揺れ動く机や倒れてくるキャビネ、天井から落ちてくる蛍光灯から自分の身を守るので精いっぱいの状況でしょう。そういった中で真っ先に状況を判断でき入場者の安全を守れるのは、現場である舞台やホワイエ(ロビー)にいる職員なのですから。 併せて、即座に判断をくだすためには、前もって公演の主催者と地震発生時の公演の中断や続行の基準について確認しておくことが重要です。
目的の二つ目は、避難誘導に携わる人数の確保。 避難誘導に従事できる人数を増やすため、通常、私たちは、清掃や警備等の委託業者の方にも入場者の避難誘導への協力をお願いしています。今回は、貸館という設定の公演主催者役の職員にも、入場者や出演者の避難誘導を担ってもらいました。今後は、劇場をよく利用されるホールや練習室の利用者を対象とした避難訓練を行うことも、検討したいと考えています。
目的の三つ目、これが苦労したところですが、お客様をいかに味方にするか。 今回のような避難訓練を体験していただくことも、或いは消防署からのご意見のように、公演の前に入場者に簡単に避難についてのレクチャーをすることも、有効だと思います。 パニックに陥らなかったお客様は、スムーズな避難誘導を可能にします。さらには避難誘導に協力していただけるかもしれません。
最初に、「地震の中の、そのまたほんの一部分」と書きました。 実際には、常日頃の施設・設備の耐震対策があり、スタッフ一人ひとりの能力を高めるための様々な状況を想定した訓練を繰り返し行っていく必要があります。 地震が発生した場合、規模やその時の施設の利用状況等はまちまちでしょう。火災を伴う場合もあるでしょう。 地震の後には、お客様を帰らせても大丈夫か、道路状況・公共交通機関の運行状況や津波等の情報確認、施設の設備の安全確認や避難所としての使用も含めた様々な対策が必要です。 今回の避難訓練コンサートでは、その「ほんの一部分」に挑戦したところです。
熊本県立劇場ではこれからも、安全・清潔・快適な劇場を目指し、地震への対応を進めてまいります。ホールは、立地条件や規模、スタッフの数など、それぞれが個性を持った施設であり、対応も異なってくるとは思いますが、今回の訓練やこれからの対応が、利用者の安全を守るため少しでもお役にたてれば幸いです。 |