間もなくステージが始まることを知らせる開演ベル。
熊本県立劇場は開館当初はブザーのみでしたが、コンサートにはチャイムが相応しいのではという声を受け、昭和58年に打楽器奏者・指揮者の福田隆氏に作曲を依頼しました。
演劇ホールにも福田氏によって作曲された専用のチャイムがあり、こちらもブザーとチャイムの選択が可能となっています。
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打楽器奏者・指揮者 福田 隆
近年までニューヨークフィル常任指揮者だったロリン・マゼールが確かウィーンフィルの指揮で県劇に来たことがあって、彼が読売交響楽団に客演した時に「熊本に素晴らしいホールがあったよ」と言っていたそうです。県劇は僕が熊本に帰ってくる前年(1982年)の12月にできたんですよ。熊本にこういうコンサートホールができて非常に嬉しかったですね。最初に音を聴いたのは熊本交響楽団『第九』のリハーサルで、とても深く、重厚な響きだなと感じました。それからコンクリートが乾いてきたからかだいぶ音は変わってきて、重厚感は薄れた反面、明るくからっとした響きになって演奏しやすくなったかなという印象です。
数ある県劇との思い出の中でも、1983年に県劇のスタッフさんからコンサートホールの開演前のブザーを頼まれたのが印象的で、まさか30年近く使われることになるとは思わず非常にありがたいし嬉しいです。1990年にコンサートホールで演奏した『肥後太鼓』のような和太鼓の曲以外では僕が作曲した初めての曲です。作曲と言えるかどうかわかりませんが…。スタッフさんが「これを使って作曲してください」と言ってシンセサイザーを貸してくれたんですよ。当時、僕はシンセサイザーとか扱ったことがなかったので、取扱説明書と格闘しながら22時くらいから始めて、面白い音がするなぁとか遊びつつ使い方を勉強してベルとしてどんな音色がいいかと探していた時でした。今でも鮮烈に覚えているんですが、朝の4時くらいに突然、ポンとメロディが浮かんできたんですよ、理屈じゃなくて。それを書き留めました。苦労して作ったとかではなくて、苦労したのは扱い方ですけど(笑)、それは不思議な体験でした。
熊本県立劇場広報誌「ほわいえ」Vol.125
『私と県劇~思い出のステージ~Vol.5』より転載